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2020/10/23

んな場合じゃないけど気になっちゃっているものもの

 斎藤真理子訳の韓国現代小説。『キム・ジヨン』は辛かったけど、この前、帯状疱疹やっぱり罹ってしまってちょうどそこそこ混んでいる時に一人で病院に行けた時にパク・ミンギュの『カステラ』をお供にしたら大層楽しくて(*)、図書館で短編を選んではつまみ読みしている。

 同じ斎藤真理子女史のウェブ上のエッセイに「編み狂う」という編み物偏愛シリーズがあり、(編み狂うー水牛のように)本当に狂っていてカタルシスがある。編み物といえば去年の冬にせっかくあやふやだったかぎ針を覚えたので、何か編みたいとはずっと思っており、思っているうちにすっかり涼しくなってしまった。今はヒャッキンの針とアクリル糸でたわしでリハビリしているが、本当は坊の帽子なんか編んでみたいところだ。刺繍だと刺さる針と見えにくい糸とコトによるとビーズなんかで店開きしなければならず、完全に寝かせてからしかできない(し、寝かせてから自分の体力に余裕があるときは別の仕事で店開きをしなければならない)けれど、編み物だったら準備も後片づけも簡単で直ちに危険になることは少ないし。。

 『アンという名の少女』ネットフリックスの海外ドラマで、NHK地上波で週末の夜にやっている。といっても、最近は『ゴールデンカムイ』すら見る時間が取れなくて(夜に坊が落ち着いているか寝ていて夫婦そろって暇だといそいそと録画を見るのだ)、ひたすら録画が溜まっていっているのだが。オープニング映像からしてたまらん世界観で、風景がとにかく素晴らしいし、キャラクターがいちいち説得力のある配役&演技で新たな発見がある。

 そのつながりで最近知ったのが、文春文庫で『赤毛のアン』シリーズが松本侑子訳で完訳出版される見通しだということ。小学校高学年くらい?に読んだ赤毛のアンシリーズは、私が初めて「翻訳」を意識した経験だったと思う。『赤毛の~』は覚えていないが、『青春』がたぶん松本訳だった。その後の『愛情』以降が最初は村岡花子訳。有名だし時代を考えると大変有意義な訳だったのだろうけれど、私にとっては、とにかく古めかしく違和感があって、物語と自分の間に「訳」が邪魔をしているような感覚が強烈だった。古めかしいというだけなら、石井桃子や瀬田貞二の訳したものの古風な言葉遣いを逆に味わって楽しんでいたので、何か肌に合わなかったか、そもそも途中で訳を変えたのがいけなかったのだろうと思う。その後いつかのクリスマスプレゼントに、掛川恭子訳の山本容子の銅版画の挿絵付きの美しいセットをもらって、『愛の家庭』以降はおそらくこちらで。村岡版で読んだのを読み返すとずいぶん違って、分量も増えていて面白かった。と、長い話になってしまったが、『青春』でかなりすっと入ってきたけどその後がなかった(当時、近くの書店に)松本侑子訳が、フル訳注付きで復活して文庫になっているということ、これはぜひ読みたいと思っているところだ。これもいつ読むの?という話だけど…キンドルなら授乳中という手があるか、ちょうどポイント還元セールやってるし。

(*)そのときは、家で一人で作業を出来る時間があれば、家事が溜まっていなければ研究をすることになっていたので、そういうラッキーが重ならないとなかなか本を読めなかった時期。

2020/10/01

とりあえず我慢しとけ、みたいなのが嫌いなので -育児雑感(8)-

 この表題で書きたいことは山ほどあるのだが、今日は服薬の話。

 先日、胃であろう腹部と背中一部がまた痛くなって、しばらく様子を見ても治らないので病院にかかり薬をもらった。たぶん、胃を痛くしている原因(これは自分の仕事の方)と少し距離を置いて、二晩くらいぐっすり眠れば治るやつだと思うのだが、この二つ目が殊の外難しい。タイミング悪く、坊は虫刺されと風邪ひきかけの鼻づまりが不快らしく、一時間に一回レベルで起きるし、授乳だけでは寝てくれずに、私が寝ようとすると文句を言う。夫が仕事だったので、普段は子がお世話になっている診療所に電話して相談し、待合でなく空き部屋で待たせてもらうことにして子を連れて行った。

 先生に診てもらい、発疹未発生状態の帯状疱疹という可能性を若干残しつつも、胃が痛んでいるのは確かであろうということで、胃薬と痛み止め。「授乳中でも問題ないお薬はいくつかありますけど」と、一番典型的なのを処方してもらった。

 ところが、薬局で「この胃のお薬ですが、授乳中でしたらミルクに変えたほうが安心です」と言われる。先生に授乳回数や量なども相談したうえで大丈夫だと言われたと返すと、「でしたら大丈夫なのでしょう」と言われたが、こういうの、不安になるから本当にやめてほしい。

 妊娠中とか授乳中は「薬飲めないし大変だよね」という極端な情報が広まりすぎていると思う。それが、本当に科学的に影響が懸念されるからなのか、「念のため」なのか、その肝心なところが、いつも分かりにくい。特に、この文化圏では、妊娠出産育児に関して、民間信仰じみた我慢の強要が当たり前のように存在するので(何しろ、人口のうち大きな声と権力を持っていがちな方の半分の身には起こらないことだから)、とりあえず「あなたが少し我慢すればいい」に相当するような見解を示されたときには、深く深く疑って調べることにしている。

 妊娠中の服薬に関しては、本当に重大な影響がある可能性が高い超初期~初期だったり、早めに子宮収縮を促してしまうものだったり、臨月になっていざ、というときの処置と干渉するようなものだったりがあるので、産科に都度確認したほうがいいでしょう。

 とはいえ、あまり勉強していない医者は、臆してちゃんと効く薬を出すのを渋る傾向がないでもない気がする。妊娠中期に風邪をひいたときには、最初近くの診療所で出された漢方薬では鼻づまりが悪化し、嗅覚障害が一週間くらい続いてお盆のご馳走の味が分からなかったらどうしようと不安になったし、咳も残り、結局産科で西洋医学の方の咳止めをもらうことになった。また、つわりで、本当に食べられなくてつらいときに、効き目のひっじょーに穏やかな吐き気止めと胃薬を出されたときには(男性の産科医で、「吐いても食べろ」とか心ないことをいうから呪いそうになった)、諦めきるまでにヨーロッパアメリカのつわりの薬事情を調べまくり、キャサリン妃がやはりひどく苦しんだという情報でやっと諦めが付いたものである。無痛分娩であっという間にヒール履いて化粧して優雅に退院するプリンセスでも打つ手がないならまあ、仕方ない。思えば、豆粒ほどの坊が、うっかりすると階段二段飛ばしとかしてしまうデカい身体の中で安全を手に入れるための必死の策だったのかもしれない。彼ならやりそうなことだ(あ、この辺は「民間信仰」系ですね、その週数ではまだ意志はないはず)。

 授乳中に関していうなら、「薬の成分は母乳に移行します」というのは、当たり前の話だ、食べたものから血が作られ、その一部が母乳になるのだから。知りたいのは、量的にどれくらいからが乳児に影響があるか。成分としてどれが健康な乳児に悪影響を及ぼすのか。いつ飲んだ薬がいつの母乳に移行しているのか。

 私が、授乳中の服薬で参考にしているのは、以下のサイトの情報です。

授乳中に安全に使用できると考えられる薬 - 薬効順 -(国立成育医療研究センター)

 今回のガスターも、頭痛やなんかの時に役立つロキソニンやカロナールは勿論、花粉症のアレグラやクラリチンも、多くの抗菌薬や有名な抗ウイルス薬も、極端な量でない限り大丈夫だと考えられるし、その理由も載っている。頼りすぎは良くないといっても、ちょっと頼ることができれば、生活の質は大きく改善するものだ。

 大体、気軽に「いったん中止して」と言う人は、母乳育児のリズムを下手にいじると何が起きるのか知らないんだろうな。頻回授乳をいきなり止めると、母乳が詰まったりするし、それをちゃんと出してやらないと(これも技術とか慣れが必要、赤ちゃんがちゃんと飲むのが一番楽に出せる)炎症を起こして乳腺炎といって夜中物凄い悪寒に襲われて40度近い熱が出たりするし、悪化させると最悪切開しなければならなくなったりする。私が冬に39度熱を出した時には、母乳外来には「インフルエンザの検査をしてそちらを否定してから来るように」と言われたが、今なら、40度の熱で病院にかかるのはもっと大変だろう。それで母乳が出なくなったら今度はミルク、平均一ヶ月一万円といわれる出費は母乳の場合は幾分は母親の食費の方に相殺されているとして、準備も洗い物も外出時の荷物も増大する。分泌を維持するためには搾乳というが、それを、薬飲みたいくらいしんどいときに、子供への通常の調乳・授乳・片付け・おむつ周りのお世話に加えて、誰がやるのかというお話。

 こんなこと、まあ、どうしてもやらなければいけないとなったらみんなやっちゃうのだけれど、普通にしていても大変なのにさらに大変になるようなことなので、薬剤師の看板を掛けているような人は、通常の範囲の調べものと少しの想像をしてみたうえで物を言って欲しいと思った次第である。