秋頃から坊が寝る前の絵本に加えて電気を消してから「おはなし」を所望するようになった。確か最初は電気を消しても一向に黙らない坊を黙らせるために私が始めたもので「とおいところのお話」か「とおい昔のお話」、短めの民話やら、小さいときの思い出話やらでしばらくは一日一つ二つ短編をまとめていたのだけれど、さすがに2か月くらいもするとネタ切れになってきたので連載にすることにした。「これは前の話の続きなんだけど」と言ったら結構覚えていることが判明したし、設定が一度できている方が話がしやすい。
その中で一番長く続いているのが「ファーティマちゃんのおはなし」である。
15世紀あたりのペルシャのイスパファンかタブリーズの学問の家系に生まれ、12歳にしてアラビア語とギリシャ語とラテン語を解して家の本を全部読んでしまったファーティマちゃんは、退屈して世界を見に旅に出る。バグダッドの王宮でジャスミン姫とお友達になって支援を得て、コンスタンティノープルでは町で一番大きい本屋で11歳のアリ君と毎日ミントのお茶を飲みながら語らい、アリ君の親戚のファーナ姉さん23歳が絨毯の商いをするための隊商にくっついてヴェネツィアへ。ヴェネツィアでは逆向きに旅をしようとするマルコくんとお友達になり、ファーナ姉さんが絨毯を全部売ってガラス玉とワインカップに変えてコンスタンティノープルに売りに帰るかわりに、船乗りのアルヴィーゼ君28歳とアメリゴ君28歳と一緒にローマを経由し、教皇庁の図書館を見たり教皇とおしゃべりしたりしてマルセイユへ(途中ジェノヴァの18人の海賊に襲われるが機転を利かせて8人に寝返らせる)。アルヴィーゼ君たちが8人の水夫たちと一緒にアメリカの方に行くので別れて版画職人のマルティンさん43歳と奥さんでお人形作家のヨハンナさん34歳と一緒に北上してパリを目指し、しばらく過ごしたあとバーゼルへ、バーゼルの工房に夫婦が落ち着いたので、そのあとトマスさん50歳とハンスさん30歳と一緒にロンドンへ。今は結局アメリカ大陸まで来ている。
いちいち、新しい街で出会った人とお友達になってお茶とお菓子を食べたり、おいしいものをたくさん食べるパーティーをしたりするし、たまに新しいお洋服を作り、旅の途中ではしょっちゅう襲われて、そのたびに色々な方法で撃退したりお友達になったり、お友達になった人が身の上話をしたり、長い手紙を送ってきたりするので、時空が飛びまくっててネタ切れにならないしとても楽しい。問題は名前が思いつかなくて適当に世界史のうろ覚えから引っ張ってるからアテネの学堂状態(というとよく言いすぎか)なのと、その都度年齢設定をさせられるのを覚えるのが大変で、そろそろ設定ノートを作らなければならないのではないかと思ったり、でもそれも負けのような感じがしたり。でも年齢だけ本当に覚えていられなくてこまる。