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2017/04/12

Here's to the ones who dream.

 遅まきながら『ラ・ラ・ランド』(2016年、デイミアン・チャゼル監督、アメリカ合衆国。公式ページはこちら)観たのだった。
 以下は、ネタバレになるほど筋には触れていないけれど、過剰な思い込みとか怨念が入ってるから、まっさらな気持ちで観るつもりの人は読まない方がいいと思います。


 予告編とか観ず、ひたすら周りの(観ていない)人が楽しみそうにしているので楽しみにしていたのだけど、いざ観るとだれもが恋に落ちるだなんてとんでもない、もっと幸せな話なもんだと思い込んでた。特に、オーディションでの「夢追い人に乾杯 the fools who dream」の歌のあたりから最後にかけて謎な攻撃力があって、しばらく思い出すだけで涙がちょちょぎれるぐらいダメージを受けた(多分、褒めてる)。
 正統派クラシックを意識して、イイ感じに目配せして見せながら、ここぞという場面で裏切る、というと、まるで小粋な作品みたいなんだけど、その裏切り方がどうも倫理的でなくてお洒落というにもやり過ぎている感じがするので、あまり感心しないのだった。急いで次の日『セッション』を観たら、やはりとてもドキドキさせるけれどとてつもなく嫌な後味が残るので、凄いけど嫌いなタイプの人だなあ、という感想を持つ。監督がね。
 『ラ・ラ・ランド』も、ちょこちょこと、むかつく。
 かと思うと、最初の高速道路でのAnother day of sunのミュージカルシーンは拍手したくなるくらい最高で、通称「プリウスのシーン」(*1)というらしいA Lovely Nightは、もう、大好き。ライアン・ゴスリングの顔はあまり好きでなくて、エマ・ストーンも、愛嬌があって表情がカワイイけど、いるだけで恋に堕ちちゃうタイプの美女ではない。そういう、なんだか、存在だけでドラマになるような美男美女ではないけど、独特のコミカルなチャームのある二人が、昔の映画のような恰好で、明かりの灯り始めたロサンゼルスの街を臨む高台で、何かが起こるとしか思えないとっておきのロマンチックな黄昏どきに、「でもそばにはほんっとにどうでもいい感じの君みたいな子しかいないって、こんなステキな夜なのに無駄だよね」とかお互いにぐちゃぐちゃ言いながらやっぱり踊りだしちゃうとか、たまらんね。少女漫画みたいにキュンキュンするわけです。お互いのことが大事になりはじめるほど、自分の仕事だけでなく二人の関係までうまくいかなくなるというその様子の見せ方もまた丁寧なものだから、思わず共感してしまう。そして、最後には、胸の奥にずしんと恨みに似た苦味を残していくので、なんかとてもアンバランスで、映画の分際で、と毒づきたくなるのである。
 願い事というのは叶ってしまうものだから、慎重にしなければならない。そんなことを近頃考えていたのと呼応するような結末のようにも思う。それでも、周囲を顧みない、呪いになりうるような願いをかけてしまうのがまた、Foolsの業なのでしょう。


(*1) 正直、六年もバイトしながらオーディションとパーティに明け暮れているミアがプリウスに乗っているのは信じられないのだけど、この場面のためなら仕方がない。というより、もしこれにリアリティがあるというなら、私のいる日本はずいぶん貧しい地域なのだなあと感じる。自分は一応フルタイムで働いてるけど、順調に地球の三周目後半を爆走中の中古コンパクトカー維持するのでいっぱいいっぱいよ?

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