Pages

2026/02/16

男子と色彩と着るもの

  尾道での短期滞在から夫が帰るタイミングで、決まって洗濯物に加わるのが二組のスウェット上下である。部屋着と寝巻にしていて滞在中も随時加わるこれらのスウェットの色調は、黒、濃紺、深緑、チャコールグレー、杢グレー、グレー。のっぺりして巨大で、部屋干しすると部屋が一段暗くなるようだ。着心地のよいコットン素材は水分をずっしり含み、1枚乾燥機に入っているだけですべての乾きが悪くなる。下着も面積が大きい。そしてヴァリエーションが少なく、彩度が著しく抑えられている。カッターシャツやカジュアル向けのパンツが加わったとしてもそう変わらない。生活に無彩色のべた塗りがまた加わっていく。カジュアルシャツやカットソーでようやく息がつける。

 母は洗濯物を干すのが好き、と言っていた気がする。だが、我々が三姉妹でなく三人兄弟だったとしても洗濯物を干すのが好きだっただろうか?思うに洗濯関連のタスクは家の男子比率によってその徒労感に大きな差が出る。女子の服にはヴァリエーションがあり、小さめで、可愛らしい小技がきいていて、洗濯に気を遣う部分はあるけれど、使い手に可愛いものを汚さないような配慮すら要求する。一方、男子服は、大きく、乾きにくく、頻繁に汚れ、傷み、大きく、暗い。雑に扱われても問題なく作られていることによって、生活や人間を雑に雑にアフォードする。

 このまま坊が大きくなって無彩色のデカい物体ばかり纏うようになってしまったら、私はきっと部屋干しで鬱になってしまうだろう。別に干すのが私でなくてもその部屋に暮らすだけでダメージが蓄積しかねない。それを防止するためには、何とかして色彩の趣味を育てなければ。

 ところがこの冬、私の努力むなしく「それはピンク色だからちょっと…」とピンクの入ったボーダーTを拒否した坊。昔は黄色が大好きだったのに、近頃は黒や青を選ぶ。赤はいまだに「格好いい色」らしいが、それよりも黒や青のほうが「格好いい」らしい。なんてこったい。

 試みに保育園で洋服に注目してみる。普段は輝くような子どもたち一人ひとりが何を着ているなんて気にしていなかったが、く、黒い…。黒、紺、カーキ、グレー、そして黒。青や赤や黄はわずかばかりのオアシスで、中間色は女の子しか着ていない。

 どうもユニクロがべビーからキッズになったあたり(110あたりが境目)から、ユニセックスのラインナップではパキッとした基本色か無彩色中心になり、パステルカラーやニュアンスカラーはガールズの形(フリル付きのカットソー、リブカットソー、キュロット、スコート)を中心に搭載されるようになっているようだ。あんなに可愛らしかったちびちゃんたちの服装が黒っぽくなってしまったのはこれが理由か…。

 西松屋はさらに顕著である。遠目にも「ガールズ」と「ボーイズ」の棚はすぐに判別がつく。ガールズはぼんやりとほんわかとラベンダー、クリームイエロー、桃や桜やコスモスのピンクに勿忘草やネモフィラ、スカイブルー、ボーイズは紺や水色が綺麗色に見えるくらい黒、グレー、カーキ、ひどいときは迷彩!嗚呼‥!

 メーカーが売れないものを作らないことに罪はない。それに、子どもの好みは最優先にしないと生活は回らない。というか、別に何を着ても可愛い。黒い眼で黒い髪に黒い服なんて字面で見ると何が悲しいのかと思うけれど、実際に着て動けばもう、眩しさしかないのだから驚きだ。そういえばこの子達の大半は、小学校から下手すると高校まで紺白に閉じ込められるのであり、閉じ込められたら閉じ込められたで、それが可愛いんだから仕方がない。

 でも基本シックでありえないスウェットまで黒くなくたっていいじゃないか…!百歩譲ってダブルガーゼのボタン付きパジャマなら紺やチャコールでもアイテムとして可愛い。でないと、可愛い本体から離れた抜け殻が、悲しい無彩色で部屋を塗り込めて、雑の気配を充満させてしまうんだから。

No comments:

Post a Comment