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2018/10/06

スズダリからの帰還(おまけに交通事情)

 続く、と書いていたのに間があいてしまった。スズダリからモスクワに帰らなければならない。
 いい時間だったので、バスを降りた修道院前のバス停で待ってみることにした。とはいってもBUSという札があるだけで、どのバスがいつ通るのかまったくわからない。なのに、地元の人々はおとなしく待っている。暖かくなったからか羽虫が飛び出した。だめもとで、立ち話をしている子連れのおばちゃまたちに聞いてみると(英語は全く通じないのだけど、なんとかウラジーミルに帰りたくてそのためにまずはバスターミナルに行きたいということは伝わったようで)1番か2番のバスを待てと教えてもらう。ところがそのバスがなかなか来ない。
 そこに、この地方の中学生ぐらいの女の子たちが半ダースほどやってきて、同じように待っていると、行先も番号もない白い、来た時のと同様に心配になるくらい古いミニバスが彼女たちを乗せた。スクールバスのようなものかな、と思っていると、運転手のおいちゃんが不安げな旅行者そのものの我々に(どうやら)「どこへ行くの?乗んな」的なメッセージを寄越すので、「ウラジーミル」といったら乗るようにいわれる。「え、いいの?これウラジーミル行くの?」と聞くと女の子たちが「ダー(yes)!」というので、乗ってしまった。二人で助手席に乗る。100ルーヴル札を見せられて払うように言われ、二人分を払うと、バスはご機嫌で走り出した。助手席の前には、切符の巻いてあるやつが置いてある。とはいっても切符を使うわけではなく、その後市内に入って警察のいるあたりを通るとき、そのロールは(予想通り)さりげなく仕舞われてしまった。


 これはまあ、普通なら絶対乗ってはいけないバスであって、我々も旅行中のこの種のものには散々気を付けているので、かなりイレギュラーな事態ではあったのだが、なんというか、少しも危険な気がしなかったし、実際に全く危ないこともなかったのである。料金は正式なバスと同じで、運転もいたって穏やかだった。そもそも一緒のタイミングで乗った女の子たちが、洗練されすぎず、かといって虐げられていそうな感じも皆無で、いかにも健康的な普通の女の子たちだったので自然と警戒が薄くなったし、おいちゃんは、全体的に腹回りなどがでっぷりしていてラフな格好で、過剰に「いい人」そうな感じもしないしそこまで頭が切れそうでもないが、オドオドすることもなく見た目とバランスの取れた落ち着いた動きで、素面で、笑顔すぎることはなく、不機嫌すぎることもない。英語は話すこともないし分かっている気配もない。ロシアの田舎で何かのついでに私営スクールバスを驚くほど良心的に運営している個人運転手としてなにも違和感がない感じだった。


 ウラジーミルのどこへ行くのかと聞かれ、鉄道駅と答える。往路は雨だったが、夕方の光に照らされた黄金の秋の景色を助手席から堪能する。


 市内で女の子たちやほかの乗客を降ろしつつ(どうやら本当のバスでないと停車&乗降がまずいエリアがあるようで、個々に交渉していた)思っていたより早く駅についた。これは夕方の特急に乗れるか??と思ったが、直前すぎでダメだったようなので、3時間ちかく、ウラジーミルの町を散策した。


 鉄道駅少し離れた小高い丘がメインストリートになっており、店や銀行、教会などが並んでいる。



 緯度が高いからかゆっくりと陽が沈み、そのあともしばらく明るい。



 ロシアの広大な土地には、森と耕地と湖が点在していて、ところどころが収穫を終えていたり紅葉していたりして、とても美しい。


 目抜き通りで少し若者向けのおしゃれグリルに入って、ハンバーガーとビールを頼んだらなぜかビールがタダだというので、そんなのを食べて、急ぎ足で鉄道駅に戻ってモスクワへの列車に乗った。
 モスクワについて、前日シベリア料理を食べたお店に行ったら無事「地球の歩き方」を回収できた。疲れ切ってGettというアプリ配車サービスのタクシーを使ってホテルに戻る。

 この日の冒険はこれでおしまいだけど、モスクワではたびたび、サンクトペテルブルクでも空港ホテル間で、お世話になったこのGettについて少し。
 ロシアの都市はスケールが大きすぎて、地下鉄駅の間が広すぎ、ランドマークから「最寄り」駅までもかなり歩くし、そもそも駅に入ってからホームにたどり着くまでも長い。そこで、タクシーがとてもありがたく思えるのだけど、Gettはその新しい版といったところ。ネット環境で使えるアプリで、現在地と行先を入力すると所要時間と道程、料金が分かり、近くにいて来れる車のなかのどれかにお願いすると、その車の色とナンバー、何分で来るかが知らされるので、それに乗るという仕組み。道順は我々のアプリと車についたスマホに表示され、料金はアプリを通して決済なので揉める心配がなくてかなり安心だ。そもそもの料金設定も安い。その割に、大きな道や空港ではタクシーレーンを通ることも許可されているようだ。
 はじめはモスクワの空港で丁寧に使い方を教えてもらったのだが、乗ってみて話題の「ウーバー」とはもしやこんな感じのものか、となかなか感心した。言葉は通じなくても全然平気だし、運転手は道を知らなくてもいいわけで、常識が覆される感じがある。タクシーの場合に、タクシーと利用客の間に入って配車したり研修したり給料計算したり、カード決済のシステム搭載の交渉したりしている「会社」みたいなのが、究極的にはごっそりなくなって大丈夫というわけだからね。普段の自分の行動範囲では全く危機感を覚えたことがなかったのだけど、こりゃあ、AIに仕事を奪われると不安になる人がいるのもわかる。どんなに便利で楽だといっても、なんだかんだとタクシーと我々の間に事務管理に入ってマージンを取るのは現状では結構よい「お仕事」で、それがなくなるくらいならなるべく長く不便な世界でありつづけてほしい…、なあんて書くとずいぶん滑稽な感じだけど、身の回りの大人を見ているとこのような行動原理はわりと蔓延っている気がするよね。

2018/10/03

モスクワ近郊の「黄金の環」スズダリ、ウラジーミルへ

 モスクワ観光の勘所を一日で見るという無謀な試みの結果、一週間いたところでこの街は観きれない、という結論に至り、それならばと向かったのは「黄金の輪」。モスクワよりも古くからロシア正教の精神的な支柱となっていた土地で、12世紀から教会が残る。世界遺産として有名な「ウラジーミルとスーズダリの白亜の建造物群」目当てに、スーズダリへ。
 前日のシベリア料理屋で気持ちよく酔っぱらった結果、「地球の歩き方」を置いてきてしまったようなのだけど、店は夜まで開かないし、まあ、なんとかなるだろうと行ってみることに。

 まだ通勤客がごったがえす時間にメトロでクールスカヤ駅まで行って、窓口で切符を買い、おそらく「ラストチカ」だろう特急列車に乗って、ウラジーミルまで行く。
 ちなみに、メトロが込み合っているときには、一日目で挙げたような壮麗にして広いホームがほぼ人で埋まり、エスカレーターの前は、なんというか砂時計で小さな隙間を目指して落ちようとしている砂のように人が溜まる。この時に決して一列には並ばない。また、エスカレーターに乗ったら歩かないのがモスクワ流だ。理由はエスカレーターが果てしなく長いし、突っ立ってても頬にビュンビュン風を感じるぐらい速いからだけど、たぶんこの方式のほうが東京駅の朝8時台とかより輸送効率いいと思う。

 さて、切符を買って特急に乗るくだりは、説明しようにも難しい。窓口であっちに行けとか上に行けとか下に行けとか言われ、パスポートを提出させられ、いくつか数字を見せられ、パスポートを見せ、切符を見せ、指さされて何かしら指示されたところに座ったら目的地についていたという感じだ。ほとんど英語はしゃべってくれない。座った場所もそれでよかったのかよくわからないままである。
 ウラジーミルからスーズダリは、『宇宙兄弟』でヒビトがしみじみ感心するようなおんぼろの小さいバスで行った(例によって切符はなんとなく買えたけれど何を言っているのかさっぱりわからなかった)。小雨。色々な旅の記録の記憶の通り(何しろ「地球の歩き方」がないので)、スーズダリのターミナルについたところで、さらに30円ちょっとお金を払い、市内まで乗せてもらう。降りるところが分からなくて20分くらい余計に使ってしまった。

 気づけばお昼近くなので、スーズダリのこじんまりしたレストランでお昼。キャベツの千切りが肉のコンソメに入った「シチー」は素朴な味。


 「ジャルコーエ」というロシア式肉じゃが。ジャガイモ(大変美味)と豚肉を塩味のスープで器ごとオーブン焼きにしたもの。豚肉の油ががっつりとスープの表面を覆い、なかなか冷めない。塩味は控えめだが、がっつりとしたコクがあって肌寒い日にぴったりだった。


 ほかにも観光客が食事をしているレストラン。
 歩いて、クレムリン(城壁に囲まれた教会)のあるあたりへ。


 青い玉ねぎ屋根の 聖母被昇天聖堂(生神女就寝聖堂というのも。要は聖母マリアが亡くなってそのあとキリストの力で昇天するのだが、正教ではこの就寝の場面の表現がすこぶるよく描かれている気がする)。かわいらしいサイズ。敷地内には博物館もあり、ウラジーミル・スーズダリ大公国の歴史が資料とともに紹介されている…がいかんせんロシア語なので年号と名前くらいしかわからない。



 上は教会の扉口。ちなみに、一応キリル文字の読み方はわかるようにしていったのだが、モスクワではワールドカップ効果か地下鉄も全部英語併記で、わりと困らなかった。田舎に来ると、キリル文字の発音が分かって命拾いする感じに。
 

 扉口の柱頭装飾にライオン。
 

 敷地は小高い丘になっていて、葉っぱも色づき始めてとてもいい感じ。もう少し晴れるときれいなんだろうな。

 敷地内の木造建築。

 いったん敷地を出て、小川を渡って対岸にある屋外建築博物館へ。


 川沿いから見える建物がピクチャレスク。近くにはお土産屋さんの屋台が並んだ広場のようなものが点在していて、結構な観光地なのだろうと思う。


 建築博物館には、ウラジーミル・スーズダリ大公国の領地だった近隣から移築してきた木造の教会、風車小屋、農家(家畜と住むタイプや、労働者を一緒に住まわせるような広い家なども)などが、広い敷地内に点在し、半分くらいは中も見ることができた。


 上は小さい教会、下は農家。


 風車小屋は修復中で入れず。



 聖堂とその中身。木で作るには向いていなさそうな円天井なのだけど、丁寧な仕上げ…。


 特に、少し複雑な教会だと、なんとしても玉ねぎ屋根を木で作ってやろうという執念が見て取れる気がする。


 少し陽が出てきた。


 街を突っ切って、修道院へ。ここは敷地内には無料で入って、現役の教会を少し見た。


 聖堂。中はきらびやかな金属で縁取られた聖画像(イコン)が壁中にあり、その一つ一つに熱心に祈っている人がいた。教会の中には、入り口でスカーフを貸しているところがあり、そういうところでは、女性はスカーフをかぶっている人が多かったので、私もその習慣を尊重して自分のスカーフを頭にかぶるようにしていた。



 鐘楼。


 不思議な二つの三角帽子の門。


 すでに20000歩以上歩いていて、疲れたのでカフェに、と思ったら入ったのがレストランで、名物だという蜂蜜酒を頼んだつもりが、綺麗な小さい皿に入った蜂蜜そのものを出されるという事件が起きる。一体全体、蜂蜜だけを頼む旅行者がどこにいるのだろう…超絶な不殺生を身上とする妖精さんか何かにでも見えたのだろうか…。言葉が不自由なのでたまにあることとはいえ、疲れていたのでなんだか参ってしまった。蜂蜜酒は置いていないらしい。

 そして、そろそろ帰るかという段になると気になるのが、帰る方法である。行きはターミナルから市内線に変わったおんぼろバスで市内まで来たのだが、帰りはどうやったらウラジーミルに戻れるのだろうか。繰り返すが、この日私たちには『地球の歩き方』がなく、ポータブルWifiの電池もわずかになっていた。ちょっと不安になってきたところで続く。

2018/10/02

モスクワ一日目のおいしいものなど

 まだ一日目、昼は赤の広場すぐそばの百貨店内のカフェテリアで済ませることに。
 幾何学的な形態のレーニン廟。中には永久保存されたレーニンの死体があるらしい(ずいぶんと偶像崇拝的じゃないですかね)…ひどく並んでいたので入場はあきらめた。

 カフェテリアでは、冷たいものは自分で取り、温かいものはよそってもらう。左上から時計回りに、細切り牛肉とオリーヴの油漬けやレモンの入ったトマト風味のさっぱりスープ「ソリャンカ」、ポテトサラダ「オリヴィエ」、ひき肉の入ったクレープ「ブリヌィ」にサワークリーム「スメタナ」、黒パン。酸味とクリームがかなり重要な仕事をしているが、それがロシア料理全般の特徴な気がする。これで600円くらいなのだけど、ものすごーくお腹いっぱいになった。


 カフェがあるのはモスクワの誇る高級百貨店らしいグム百貨店。並ぶ店は錚々たるものだが、アーケードが無駄にかわいくて、ちょっとアウトレットモール風である。
 ちなみに、このカフェテリアに、デジカメを置き忘れて、30分ほどして戻ったのだけれど、レジで預かってくれていた!素晴らしい。


 満を持してプーシキン美術館に向かい、まずは、最寄り駅からすぐの救世主キリスト教会(救世主ハリストス大聖堂などとも)へ。
 この場所は複雑な歴史をたどっており、もとは19世紀終わりごろにロシア正教会として作られたが、スターリンのロシア正教弾圧&ソビエトを称えよ政策で1931年に爆破される。そのあとソビエトの象徴的大宮殿が建てられるはずが難航し、1960年からは屋外の大温水プールが作られて市民憩いの場になっていたらしい。いちいちスケールが大きいことである。亀山郁夫先生の『あまりにロシア的な。』(文春文庫、2013年)では、プールの跡地が荒れ果てたままの不気味な穴として登場する。今建っている教会は2000年に再建された非常に新しい聖堂で、なかもピカピカの現役、熱心にお祈りする人が多い。

 プーシキン美術館は、本館とヨーロッパ館があり、両方ヨーロッパ美術だがヨーロッパ館には近代絵画が収集されている。写真は本館のほう。続く二枚が、ちょうど館内の彫刻コーナーなのだが、彫刻の多くが石膏あるいはブロンズのレプリカで、西洋の主要な彫刻が時代・場所ごとに網羅されている。つまりは画学生や美術史学徒の教育目的なのだけれど、レプリカでも写真で見るよりずっといいし、結構コンパクトにまとまっていて面白かった。絵画は珠玉の本物が並んでいて、すこぶる楽しいのは言うまでもない。




 夜はシベリア料理店に行ってみた。高級らしいが、ピカピカのほうではなく、隠れ家的で、しかもあまりお腹がすいていなかったのであまりたくさん頼めなかったのだが、色々丁寧に教えてくれて、サービス素晴らしかった。
 シベリア料理の外せない逸品がストロガニーナстроганинаという、凍らせた魚を薄切りにしたおつまみらしい。二種類の魚の種類があって迷っていたら、ハーフ&ハーフにしてくれた。これはルイベですね。非常に淡白な魚なんだけど、口の中で溶けるときに風味と食感がふわっと生き返る感じでとてもおいしい。胡椒とジンジャーソースというのをかけるのだけど、このジンジャーソースにレモンが効いて、かすかな生臭みと合う。


 生臭いものと合うといやあ、めちゃくちゃ合うのがウォッカである。少しアニスとかスパイスのフレーバーのついたものを頼んだけどキンと冷えてすごく美味。我々はとてもじゃないが一息で飲むのは無理なので、水と交代交代にちびちびやりました。


 メインはエルク(ヘラジカ)のステーク・アシェ。ひき肉くらいに細かく刻んで焼いたもの。ツナギとか野菜とかを練りこんでいないし、とにかく味が野生的なので、ハンバーグという言い方はそぐわない気がする。しいていうなら漫画『ゴールデン・カムイ』で一躍有名になったアイヌの肉食方法「チタタプ」(何人かで分担して骨や筋も含めて刻む料理、生で食べたりそのあと団子にしてスープに入れたりする)と通じるんじゃないかな。ちょっと軟骨のような歯ざわりも入っているし、独特の風味は「臭い」というより血肉を食べている感じ。フランスで大好きな高級品だった香り高い森のキノコ「ジロール」と、レッドカラント(山になってる酸っぱくて赤くてきれいな実)とクリームを合わせたソースがついている。野生に野生を合わせ、森に迷い込んだ時に出された忘れない味っていう感じの料理で、なかなか日本ではないだろうがとても好みであった。


(おーっとなっていたら、取り分けてくれた。この後実感するんだけど、ロシアでは結構よさげなレストランでも、実に気軽に「シェアします」をOKしてくれるのがありがたい。)

2018/10/01

モスクワ、1日目

 九月にロシアに行ってきたので、写真を整理しがてら、簡単に載せてみようと思う。
 (去年のイランは、そのあと色々勉強したくなって結局記事にできていないので、この度は極力Done is better than perfect精神で荒書きをじゃんじゃん載せてしまうことにします、悪文御免)
 まずはモスクワ。
 スターリン様式のホテル、に滞在した。川向うにみえるエンパイヤステートビルみたいなシルエットのやつである。スターリンが好んで彼の生きているうちにモスクワに7つ建てられたという。うち一つは外務省、一つはモスクワ大学のメインビルディングと、使い道も猛々しい。このホテルはシルエットは荘厳で、建物はとにかく素晴らしいが、ふたを開けるとピカピカ成金ゴージャスで、ついた夕方にスパークリングワインのボトルサービスがあったのはビビった。
  ホテル近く、キエフスカヤ駅のそばの大型ショッピングモール。右の金色の彫像は上下するし、噴水は音楽に合わせてコンピュータ制御されていて、平日朝なのに足を止めてみている市民がたくさんいた。
キエフスカヤ駅そばの歩道橋。川と道路を一緒に渡れ、途中で降りることもできる。エスカレーター・エレベーター完備で、全天候型。とにかく道路が広いので、歩道橋か地下道がたくさんあるのだが、歩道橋の場合きちんと屋根で覆われている。
  中はこんなん。広い。
  キエフスカヤ駅かな?地下鉄の駅ホーム。舞踏会できそうなくらい天井が高く広く、重厚感のある内装。電車は大体90秒おきくらいに来る。
 地下鉄駅がシェルターの役割を果たせるように作られているのは有名な話らしい。どれも、中の空洞が広く、長く速いエスカレーターでかなり地下深くまで潜ることになる。入口は少ないので、地図上では近くても実際に電車に乗るまでにかなり歩かなければならないことが多い。開口部を少なくするのは防寒の意味もあるのだろう。地下鉄駅構内に入るときには、入口でその都度、セキュリティチェックがある。

 クレムリン。武器庫とダイヤモンド庫はパスして教会の密集しているあたりを一通りみた。教会建築については、現役に教会として使われている場合は写真撮影ができず、博物館になっている場合、撮影が可能で入口で入場料を取る、という区別をしている模様。こちらは広場に入るために入場料を取り、個々の教会内は撮影禁止だった。
  未完の鐘。タルコフスキーの『アンドレイ・ルブリョフ』でも大きな鐘の鋳造が一つのクライマックスになっていたのだけど、鐘に対して特別の感情があるのかな。
  一度も使われたことがない大砲。
  まだ雲に覆われている赤の広場。玉ねぎ頭がキュートな聖ヴァシリー聖堂には、この日入ることができなかった。なぜかクレムリンの一角からこちらの周りまでが物々しく閉鎖されていた。
  昼を過ぎると晴れ間が。モスクワ近郊は三日半の滞在だったが、うち二日が、このように朝は小雨がちらつき、どんよりと曇っていた。昼過ぎから雲が晴れ、夕方はからっと気持ちの良い晴れで、日が沈んでしばらく明るさが残り、人々も結構外を歩いている。