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2018/10/11

沼の上の人工都市

 サンクトペテルブルクには、飛行機で夜に着いた。例のGettで、モスクワであまり見なかったアラブ系の運転手の少し荒めの運転でモスクワ大通りを通ってネヴァ川沿いのホテルに来るまでの道のりから、モスクワとは趣向の違うヨーロッパ的な都市の外観に気づく。建物の屋根が一定の高さで切りそろえられて、教会などのモニュメントだけが少し飛び出すようなスカイラインはパリのよう。建物もパリを思わせるようなものが多い。スケールは大きくて、例えば8階建てではなく10階建てくらいかな?モスクワほどではないが車線も広く、一区画が大きい。美術学校そばのプチホテルの窓から、ちょうどネヴァ川にかかる橋の夜景が綺麗に見えて、それだけでこの町が大好きな気分になって一夜、朝窓を開けて、建物の一つ一つが実は綺麗なパステルカラーなのを見て、余計に気に入ってしまう。

 深夜には橋の中央が開いて、大型船舶が航行可能になるとか。残念ながら見られなかった。


 聖イサーク聖堂は、外観も中もヨーロッパ風であった。





  写真では見づらいけれど、全体的に多くの宗教画の周りに色大理石と金色を使った装飾がかなり豪華。ここは博物館なので、写真を撮ることができる。上の写真の中央のアーチの上のほうに、ごちゃごちゃっとみえる人の形のような装飾は、イエス・キリストはじめ関係者の中でも重要度の高い人たちで、身体が彫刻的に作られているのに、顔は、敢えて平面の絵を、角度をつけて立体的に配置された金のプレートの上につけてある。イコンに対する格別の信仰心がこういう微妙に折衷的な造形に表れているのかなーと、興味深かった。


 基本的に朝は晴れて、そのあとは曇りで小雨もぱらつく。夕方になると晴れる、というのがこの街のこの時期の天気みたい。モスクワから体感気温は5度ほど下がって、ダウンやウールのコートを着ている人も多く、季節が一気に進んだみたい。


 ネフスキー大通りというメインストリートをお散歩。


 カザン大聖堂。これは現役の教会。ローマのサンピエトロチックな湾曲した回廊を持つ、やっぱりすごくヨーロッパ的なつくり。中の装飾や平面プランもカトリックの教会を思わせるが、熱心な信者たちがイコンに口づけして祈りを捧げるために長蛇の列を作っていた。


 これは、パリじゃろう!となったのは本屋さんだった。アールヌーヴォー、アールデコ様式の立派な建物が多くて、歩いているだけで楽しい、のだけどスケールが大きいので疲れる疲れる…。


 この本屋の右奥にあるのが、有名な血の上の救世主教会。翻訳者が違うからなのか、ロシアの固有名詞の日本語訳はたまにとても詩的な気がする。「タタールの軛」なんかも、格好いいじゃない。

 チョコレート工場のような土臭い色調で、工芸品のようなかわいらしい三角屋根や玉ねぎ屋根がついている。


  
 細部も見ていて飽きない。


 ロシア式のバルダッキーノ?天蓋の屋根部分の造形が面白い。


 教会の装飾までヨーロッパを向いているかのように見えるこの街のなかで、他と差別化するかのように、この建物は外観も内部装飾も一貫して土くさいロシア式を守っている。それでいて、モスクワやスーズダリで見たどの現役の教会よりも、洗練されていて、控えめに古色を出したモザイクがキラキラと細かく輝いていて、どの角度から見ても素敵だった。ロシアの教会で一番、と我々の見解が一致を見る。









 このあたりで、お昼ぐらいだったのだけど歩きすぎて疲れてしまった。そしてエルミタージュの夜間拝観中にどうも喉の痛みが悪化して、少しダウンしてしまいます。続きはまた。

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