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2017/12/09

今後に期待。『ワンダーウーマン』

 遅ればせながら『ワンダーウーマン』(パティ・ジェンキンス監督、アメリカ、2017年)DVDで見た。女ばかりの暮らすアマゾン族の聖地で鍛えられた王女ダイアナが、偶然紛れ込んだ男を助けたのを契機に第一次世界大戦下の人間界に行き、泥沼の戦争を終結させるべく彼と協力して戦う。
 アメコミヒーローものの大予算映画で初めての女性監督作品、最強美女がわしわし活躍して世界中の女の子たちをエンパワーする映画、と鳴り物入りだったので大分期待してたんだけど、少し期待しすぎてたみたいだ。というか、一次大戦の前線の描写がかなりリアリスティックで本当に泥沼で、しかもそこそこ長く続くので、小さい女の子は怖いんじゃないかなあ。私だったら高校入るくらいまで無理だったと思う。あと、戦場や銃後ロンドンの描写が細かいわりに、最後のラスボス対戦の背景が基本的に燃え盛る火になっちゃってて視覚的に物足りない印象を受けた。魔法最大出力で戦うときこそ、大聖堂なり石橋なり摩天楼なりオペラ座なりを壊すなどしてそのパワーを楽しむのが映画というものではなくって?
 いや、全体的に面白いんだけど、もっと新しい価値観をぶっこんでくるのかと思っていたもので…。塹壕戦に毒ガスに戦闘機、というヨーロッパのトラウマを、アメリカ人スパイとスーパーヒロインが華々しく活躍して打開し、その後、時を経て成長したヒロインが、また人間を救うべく、2015年のパリ同時多発テロを思わせる方角に向かって飛んでいくところで終わる。とまあ、図式が単純なのはアメコミだからいいとしても、ヒロインがおぼこすぎる。とはいえ、今作はワンダーウーマンが現実と折り合いをつけて自分の使命を自覚するまでの成長の物語という位置づけなので、続編に期待なのかもしれないが・・・。今の段階では、ダイアナは三蔵と出会うまえの孫悟空みたいな感じの無鉄砲さと無茶苦茶な強さに加えて正義感が強く思い込みが激しいから余計に手に負えない。逆に、彼女を全く邪魔せずに必要な情報や仲間を確保しながらうまいこと活躍させてしまうトレバー大尉の有能さや人間的な成熟が印象的であり、何よりクリス・パインの顔が軍服からのぞくタートルネックの軍用セーターに包まれて出てくるのがなかなかに素敵である。当然のごとく二人の間ではロマンスっぽくなるんだけど、これは片方の圧倒的に成熟した大人の愛と自己犠牲によってもう片方が現実を受け入れて成長するという、ありがちなメロドラマなのですよね(*)。
 

 (*)今まさに『ダークタワー』シリーズ半ばの長い長い回想の中で、若きローランドの恋人のスーザンが感動的に死んでしまった場面を読み終えたところで、世界が違う二人の愛が美しく成就するにはどっちか(あるいは両方)が死ぬに如くはなし、の公式の万能さを再確認したところなので(これは、『タイタニック』でジャックが最後ドアの上とかに乗っからないのが物語的な要請に基づくのとか、『ベルばら』でオスカルの退場のタイミングの見事さにも通じる)もすこし別の形が見たいという気持ちがある。