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2017/09/10

ひとりメシ大集合 (2)


 ワシントンDC、何度かファーストフードが続いたので、えいやっ!と駅の構内にあるちょっとよさげなグリルに入る。これ、ただのバーガーに見えるけれど、実は挟んであるのはその地方の名物「クラブケーキ」なのです!
 クラブケーキって、よくお話に出てきて、お菓子みたいな名前なのにご飯らしいし、つくり方が複雑でコツがあるみたいだし、すごく気になっていたアメリカ料理の一つである。
 何者かというと、チェサピーク湾の名物であるカニの身をほぐしたものを、ごく少しのツナギとともに丸めて、軽い衣をつけて多めの油で焼き付けたものと思われる。いわば、カニクリームコロッケにおいてクリームとカニの配合を逆にしたような感じだ。メインで頼むと二つ付くのだが、高いので(写真のように、よさげといっても白いテーブルクロスとかワイングラスとかではないような食堂でも一品で20ドル台後半以上に)、お財布と相談してサンドイッチにした。こちらは一つ分しかつかないので安く、お腹もいっぱいになれる。タルタルソースとキャベツといっしょにバンズに挟まれて、コールスローとフライドポテトが付く。味は、日本のカニのように強烈に海と甲殻類の風味がするというものではなく、もう少しやさしい味。ほぐし身の繊維がもさもさとしてとても満足感がある。

 ところで、ポテトの為にマスタードとケチャップを持ってきてくれるのだが、このケチャップの瓶は、合衆国で目にした諸々の風俗習慣の中で最も理解に苦しむもののひとつである。つまり、「瓶」なのだ。それも、広口の瓶からスプーンなりで掬うのではなく、飲み物の入っているような瓶で出てくる。当然、少し傾けたくらいでは出てこない。恐る恐る完全にひっくり返しても、……やっぱり出てこない。蓋をして、恐る恐る、瓶を上下さかさまにして振る。蓋を取る。やっと直径2センチ分くらい出すことが出来た。でももう少し欲しい。えいやっ!とそのまま一振りして、……すでに勘の良い読者の方はお気づきのように、これが皿の上に運よく落ちるはずがないのでございます。
 きっと、どこかに、アメリカの子供なら小学校2年生くらいで完全にマスターするような、なにかコツがあるのですよね?納豆の醤油を入れすぎないとか、たれの袋を破るときに服を汚さないためのスキルみたいな、ね?


 さて、最後はボルティモア。日中あまりに時間的な余裕がなくて、とうとうセブンイレブンの2ドルのホットドックを他人様のお家の軒先を借りて雨の中ほおばるという暴挙に及んだ分、最後の晩餐はきちんと座って食べようと思って、ホテルスタッフのお薦めアフガン料理屋に。白テーブルクロスにワイングラスのお店である。 けど、全然リーズナブル。下の写真のシチューと米とソースとほうれん草のピュレがセットで、なんとかという料理一品なのだが、これで16ドル。ワインとサービス料、税あわせても30ドルだった。



 せっかくだから、ここは羊を食べよう!と、羊の煮込み定食に。クミンが効いたトマト煮込みにヨーグルトがかかっている。ごろごろマッシュルームが入っていて、味が染みてとてつもなくおいしい。ご飯(これもクミンと炊いてある)にかけて、ほうれん草のピュレを添えて、そこに、コリアンダーの葉と唐辛子少々にレモンとオイルかな?そんな感じのスキっとするソースをかけて食べるのだけど、これはどうにかして再現したいくらい本当においしかった!


ひとりメシ大集合 (1)

 学生やっていた時分は、美術館巡礼旅といえば、昼は700円相当のサンドイッチじゃ高いからスーパーで買った袋入りパン(*1)とリンゴで済ませよう、とか夜も駅近くの売店で2ユーロのホットドックとザウアークラウトで、みたいなことやっては2週間で2キロ体重落としたりする無茶をやっていたものだけど…、少しは経済的にまともに装備できるようになり、かつ「用事があって一人で旅行中の大人ですがなにか」みたいな形態が取れるようになってからは、一人ご飯もなかなか楽しくなってきた。まあ、めんどくさくなってスーパーやらで済ますことも度々ありますけれど。
 以下はゆるやかに時系列に沿って、なんとなく印象に残ったご飯など。


 ポートランド州立大学近くにあり、いつも繁盛している中華屋は、点心や北京ダックを出すらしい。これは牛肉の四川火鍋麺みたいな感じの名前で、「辛いのは好きだがあんまり辛すぎるのはちょっと」とかぐちゃぐちゃ言ったら「まかせて!」ってちょうどいいのが出てきた。麺はきしめんよりも幅が広く、餃子の皮を薄く長く切ったような感じで、上には八角と花椒の効いたほろほろの牛塊肉。美味しくて、碗にかぶさるようにして一心不乱に食べた。御覧の通り、何故かレンゲではなく「おたま」が付いてきて、なので、小皿に取り分けて食べるべきだったのかもしれない。始め箸を持ってきてもらったのだが、結局幅広麺が食べにくくてフォークに巻き付けるようにして食べた。ビール飲んで、サービス料も払って、21ドル。思えばこの街は安かった。


 ポートランド、土曜のファーマーズマーケットにて、インドカレーと特製レモネード。ジャガイモとチキンが入っていて底にご飯。思いのほかやさしい味で、日本のカフェ飯っぽい。

 ボストンは、気持ちも時間も余裕がなさ過ぎて基本的に買って済ませていた。サンドイッチ屋のサラダバーの近くにスープバーがあって、スープとパンを買って10ユーロ弱とか、そういう感じ。


 写真はニューヨーク初日に入ったイタリアンで食べたラザニア。雨降りの日で、とにかく温かいものが食べたくてホテルのそばで見つけた。きちんと温かいし、美味しくて、一人客もちらほらといて落ち着いた。


 店内にピアノがあり、その周りに集まっている人々が順番に歌う。ニューヨークに来ると、座ってゆっくり食べられる場所では、メイン一品に飲み物一杯で、サービス料と税金を含めると30ドル前後に。


 ニューヨーク、ホテル近くに、ガイドブックにも乗っている有名なベーグル屋さんがあるというので並んでみた。ゴマベーグルにサーモンとクリームチーズという基本でお願いして、コーヒーを付けたらなんと15ドル!ぎゃあ。でもとてもおなか一杯になるし、兎に角美味ではあった。


 ニューヨーク、ホテル近くのタイ料理屋のテラス席で、海老のトムヤムクン麺。麺は米粉のフォー。疲れると汁物欲しくなりますよねえ。


 ニューヨーク、タイムズスクエア少し上がったところのベンダートラック(トラックの屋台みたいなやつ)でトルコめし。とても美味しそうには見えないと思うけれど、これがなかなか美味しいのです。少し風味のついた(思うにサフラン色のスープで炊いてある)長い米の上に、コマ切れになった鶏と牛の肉(つまるところケバブ)、生の野菜。これにヨーグルトとマヨネーズの混ざったようなソースと、フランスでいうところのアリッサ(またはハリッサ、唐辛子とニンニクのペースト)をかけて食べる。平日夜で、スーツ姿の会社員や、これから観劇に行くと見える家族連れなんかを眺めつつ、噴水の縁に危うく腰かけて観光客気分を満喫した。


 これは、一日素描室に籠って、もったいないからその後夜間拝観の閉館ギリギリまで美術館を歩いた結果もうふにゃふにゃに気が抜けて、命からがら買って帰ったデリ。米とか肉、魚、野菜、色々あって、全体の重さで値段が決まる。これで10ドルくらい。焼いてマリネした野菜で元気が回復した。


 ニューヨーク、可愛げハンバーガー。


 フィラデルフィア、可愛げ控えめハンバーガー。この、たたきつけても決して割れないトレーに、ぶん投げてもサッと拭くだけですぐ使えそうなテーブルを見よ。にしても味は素晴らしかったー!牛赤身肉をまだらに挽いたのが、ツナギなしで焼いてあって、どろっとしたチーズと、カリカリのベーコン(これは調味料である)と行方不明になりがちなピクルス。肉の幸せという味がする。


 フィラデルフィア、チェーンのメキシコ料理ファーストフードやの、タコライス。長い米に、豆の煮た奴、チョリソーを細かく切って炒めたもの、トマトの角切りマリネ、アボカドのペースト、チーズ、生野菜、それから白ソースとアリッサ。これも見た目は微妙になってくるけど結構いける。


 

2017/09/09

旅の持ち物反省会(気付いたときに更新中)

旅の持ち物備忘録

↑これは、以前に書いたもので、ぼちぼち更新しながら今もわりと使っている。
 例えば、室内履き用のクロックスは機内に持ち込まずトランクに入れているし、そろそろタオルを持参しなければいけないような宿はあまり使わなくなってきたりなど。あるいは、機内に持ち込んで乗り継ぎ時間に顔を洗ったりするときのタオルは、近頃はご機嫌で「手ぬぐい」を使っています。

 さて、反省。
 今回は、アメリカ西海岸・東海岸、8月下旬から9月上旬まで計17日間。
 気候は、同時期の日本よりはだいぶん涼しく、湿気も少な目。
 滞在時の体感気温は、ワシントン>ニューヨーク>フィラデルフィア>ポートランド>ボストン>ボルティモア(これは雨だったため)というところ。
 場所は、大学、美術館、図書館等中心。

 服は、一週間+一日くらい洗濯無しで大丈夫なように持参し、滞在中に2回、比較的長居したポートランドとニューヨークで洗濯を入れた。

◆持って行ってよかったもの
・サングラス:日差しは本当に強かった。
・耳栓:飛行機機内だけでなく、今回はニューヨークのホテルで室外機の音が結構きつかったので、これで安眠を確保していた。
・スニーカー:動き回るメインだったので、持って行って正解だった。
・ジャケット:今回は五年前から使っている夏用の薄いベージュのタラっとしたやつと、バーゲンで新たに仕入れた紺の襟無し裏地無しの夏用ニットジャケットを持参。日焼け対策にもなるし、肌寒い日も使えるし、大人にみられるし、便利だった。特に襟無しのはカーディガンみたいにも使えてよい買い物をした。東海岸の都市では、働く人は男女ともにこのシーズンでも夏生地のジャケットを着ている人々が多く、目の保養でした。
 大人にみられるといえば、同じ理由でプリントのボックススカートも。しゃらっとした生地は畳んでおいてもしわが目立ちにくく、汚れも目立たないし、無地のTシャツにジャケットを羽織ればどこへ行っても大丈夫。
・淡水パール:おしゃれしたい意図が伝わりやすい。
・ワイドデニム:ユニクロの黒デニムで、少し薄目の生地の9分丈。これは、ジャケットを羽織ればキチンとも見えるし、機内でまるまって眠るのにもストレスがなくて万能であった。
・amazon kindle paperwhite:文庫本より軽い小さなサイズのを娯楽用に導入したのだけど、「読むものがなくなる」という不安から解放された。っていっても旅先でもガンガン買ってしまうのだから世話ないんだけど。これのもう一点いいところは、スマートフォンやタブレットと違って、直接目に来る光が少ないのに見えるから、入眠儀式に使いやすいことです。最近はスティーブン・キングの『ダーク・タワー』シリーズ、ちょうどアメリカなのでよい感じ。
・よいデジタルカメラ:研究のために導入したもの。canonのコンデジの中でいい奴だと思います。近頃は一般人が手にするのはスマホとデジタル一眼に二極化されているのかという印象があるけど、一般人のなかでも美術史のひとにはスマホでない、かつハンドバッグに収まるデジカメは強い味方だ。薄暗い美術館でも「失敗して使えない」写真が劇的に減った。

◆あまり使えなかったもの・再考の余地があるもの
・モバイルwifiルータ:今回は仕事上連絡を確実に取れる手段が欲しかったのでレンタル契約していった。ところが、基本的には美術館とホテルと大学はWifiが飛んでいるので(日本よりは断然飛んでいる)、結局、移動時間くらいしか使わなかった。機器は持ち運ぶには重たいし、途中通信障害で二日間ほど通信が滞ったので、信頼性という観点からも微妙である。
・ロングスカート:チノのロングスカートを持って行ったけど、案外旅先だと動きにくいし、雨が降ると裾が気になった。
・パンプス:ピンクの4センチヒールを持って行ったのだけど、薄い色のパンプスを履いている人は少ない印象。汚れるからかな?やっぱ黒が万能か。
・ある種のカットソー:普段着るものでも、旅先は腕周りが少しでも窮屈だと頭痛がしたりするので、持って行ったけど結局着なかったものがある。

2017/09/07

魅惑の朝ごはん

 間が空いてしまいましたが、今夜が最後、ボルティモア。教会や古いお屋敷の並ぶマウントバーノン地区にある19世紀の香りのするプチホテルにいるが、なんかリネン類から洗剤が残ってるんじゃないかと思うくらい爽やかで人工的な香りがする…。音と香りはあまりレビューに書くひとがいない気がする、というかこの二点は私普通の人よりも気になるのかもしれないので、難しいところである。
 どこでも時間的な余裕がないので、ワシントンでリンカーン記念像を見ず、フィラデルフィアで独立の記念モニュメントたちも見ず、ボルティモアでもインナーハーバーを見るのもあんまり疲れたし雨なのであきらめてしまった。とはいっても、どこかしら歩くだけで色々と発見があり、都市の中での地区のカラーの違いを差し引いたうえでも州ごとの違いが何となく匂ってくる気がする。


 話はまるでかわりますが、これはポートランドのホテルの朝ごはん。ビュッフェで、メインはスクランブルエッグにカリカリベーコンとジャガイモを角切りにしてきつね色にソテーしたものである。炭水化物はトーストや甘いパンも選べるけれど、ダントツ人気で結構おいしかったのがワッフル。


 右にみえるタワーから紙コップにタネを出して、左にある回転式ワッフル機で2分30秒焼くのを各自行う。その隣には、ホイップクリーム、バター、メープルシロップとチョコチップなどのトッピングが選べる。
 種が甘めで、案外美味しかったのが、ベーコン×メープルシロップ。気持ち悪い感じしますかねえ?『大草原の小さな家』シリーズの『長い冬』で、お父さんがワイルダー家に行ったときに食べるそば粉ホットケーキが、確かベーコンとシロップをかける(シロップはひょっとすると記憶ちがいかもだけど)のがとても美味しそうだったので、機会があれば…と思っていたのです。アメリカはフランスよりは甘い×しょっぱいを使う気がする。あと、みんな大好きカリカリベーコンは、「調味料」として使われているんだ!と先日ベーコンチーズバーガーを食べながら気付いたところです。


 ワシントンでは、うまいこと官庁街のオフシーズンに滑り込めたのか近代的で居心地の良いホテルに当たり、朝ごはんも素晴らしかった。同じくビュッフェで、卵、ポテトのソテーは夏野菜入りで少しスパイスのきいた南部風、同じく南部名物のビスケット付き。それとカットフルーツにヨーグルトとナッツ、ベリーをかける。これぐらいちゃんと食べると午前中十分動きまわったり緊張する調べものしていても疲れすぎないし、昼に眠くなるほど食べなくても夕方までもつので旅行中には大変よい。

2017/09/02

NYCまたまた経過

 昨日と今日で、少し緊張する用事を無事に終えたので、夜は近くの野菜たっぷりデリを買い込んで宿に帰ってからはぼへーっとしている。今日のランデブーは不確定要素が多すぎて、朝ごはんと昼ごはんがおろそかになってしまったので反省(合わせてアップルシナモンマフィン一つとコーヒー二杯、チョコレート)。きちんと食べなければ余計に疲れてしまう。時間が足りないったら足りなくて、街レベルでGoogle map上でみたら静止しているように見えるようなときもすごく忙しく動き回っていたりする。



 昨日は少し夜体力的にも余裕があったので、MOMAの夜間拝観&夏季限定の木曜中庭コンサートののち、少し下って世界の中心であるかもしれない(かった)ところのタイムズスクエアのあたりを見ることが出来ました。一角だけまばゆいばかりに明るいので、別世界にやってきたような気分に。そして、そうでない場所については、これほどの大都会だけど案外明るくないんだということに気付く。


 グランドセントラル・ステーションのあたりからクライスラービルディングを臨む。私の浴衣の柄はいつもエンパイアステートビルって言ってたけどありゃあクライスラーの方だな。そしてこっちの方がエレガントではないでしょうか、ね。