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2016/05/17

アンダーグラウンド

 エミール・クストリッツァの撮った映画で始めて観たのは『ジプシーのとき』。7~8年ぐらい前、なにやら怪しげな上映会で、後から感想を言い合った。何を言ったのか覚えていないが(実のところストーリーもあまりよく思い出せない)大学の先生みたいな人に、上映中あなたの表情が面白かった、みたいなことをいわれたのをなんでか覚えている。
 兎に角、先を予想したり前を反芻したりといったことをするには想像を超えていて、その瞬間瞬間、ただ目の前を過ぎていく映像と音楽に夢中になっていたのだと思う。後は七面鳥とか、段ボール箱とか、クラゲみたいな花嫁のヴェールだったりとか。
 このたびの『アンダーグラウンド』は、多分、それ以来はじめて。ヴェールは今回はなお一層クラゲみたいだった。七面鳥はいなくって、アヒルとか、水鳥。水鳥が、そりゃあもう重そうに飛ぶのだ。段ボールはなくって、代わりにあの地下の工場かよ、なんだよあのシャワー!もう、夜自転車漕いでる人みたら発電しているようにしか見えないんですけど!

 よくわからないが見たほうがいいような気がして時間を作って観に行って、たしかにそう、これは観るべきものだった。
 
 結構まだ頭の中がドロドロしていて、書く方がいいのかどうなのか、書いて何かになるとも思えず、酷く持って回ったよくわからないことを書くんじゃないかと思うけれど、世の中に生きていると、あるトコロからだけみえる、他の場所や機会や方法ではみられないものがあって、この映画はそういうものを見せる。頭の中でたくさんの声がギャーギャーと喚いているようにして、これでもかと。そして、そういうものがあるという事を、今初めて分かったような気分にさせる。
 冒頭のブラスバンドの調子っぱずれに浮かれポンチで直球な音楽が始まってからずっと、もう、こらえようもなく不健康に愉快な気分になってしまって、こちらの心は騒ぎっぱなしだけど、スクリーンの向こうもひどくって、基調として酔っぱらって怒鳴り交じりで馬鹿笑いしながら歌ってて、手を伸ばすとそこいら中に銃があって、ズボンにも入ってて、サスペンスもなく簡単に発砲されて、そうしているとウソみたいに情け容赦なく爆弾が降ってきて、廃墟になった町で、爆破された動物園から迷い込んできてへばっている猛獣を眺めながら、黒猫で靴を磨いたりしているのだ。人間の一生の何十年も(20年だ)が太陽も月も知らずに過ぎたりするけど、歴史の犠牲者とかいう感傷的なものに収まりきらず、そもそもは身内のだまくらかし合いにしては矢鱈とスケールが大きくて、地上に出たとたん、昨日の喧嘩の続きみたいにして戦争してたりする。ドイツのマンホールの下をずっと歩いて行ったら本当にアンダーグラウンドな道路網がバルカンやイタリアまで続いているんだろうか?

 普段は、「これはもっと前に見ておくべきだった」とか「若い時に読むべき本」みたいな言葉に対しては疑わしく思っているけれど、この作品については、ちょっともったいない見方をしてしまったと思わないでもない。1995年に大人として、つまり3-4年前からきちんと世界の情勢に興味をもって知って、自分の考えを持っているきちんとした大人として、これを観てみたかったと思う。多分、世界中で1995年から2-3年の間にそういう人たちに、(というと限定しすぎかもしれなくて、別に1995年じゃなくて今になっても、ユーゴ内戦の同時代人たちに)、ココからでなければ見られない世界を見せた映画だと思う。
 (とはいえ、それはいずれにせよ叶わぬ望みではあるので、ベストを尽くしたということになるのかな。まあ、頭のドロドロはやや鬱陶しくはあるけれど、やっぱり観てよかったのだ。)

2016/05/09

角島大橋ひゃっはー

 雨の日の月曜日、すっかり連休が終わった気分でがっつり仕事した後は、頭休めに写真の整理でも。今年の連休は幸いにもいくつか行きたいところに旅が出来たので、おいおいおしゃべりしますが、まずは角島大橋を。

 場所は山口県下関市、本州と「角島(つのしま)」を結ぶ、1.7kmくらいの橋で2000年に開通した。国定公園内なので高さが抑えられているのですって。途中、大きな船を通すために少し高くなっている場所があったり、ハト島を迂回するため大きく曲がっていることで、余計にピクチャレスクで趣がある。


 愛すべきポンコツを駆ってのそのそ行ったので、島まで橋を渡ります。吊り橋じゃないので、本当に海の上を道が続いているような感じ。写真撮れていないけれど、上から見た海の色がまたすごい。ガラス玉みたいな透明感のある明るい青緑が、島に近づくにつれて濃くなっていく。

 
 角島側から本州を臨む。この日は天気も殊の外よく、まだ午前中の清澄な光が眩しかった。


 角島に上陸して、そのまま橋と反対側まで来ると、灯台があった。海の色が少し濃くなったような気分。ミカンの花の強烈なにおいがする。


 

 島の灯台付近の駐車場では、電動式のけったいな機械で烏賊が回っている。一夜干しの焼いたのが塩焼きにして売ってあって、なかなか美味しかった。
 (ここでイカを食べておいたのは正解で、この時、普段は長閑なはずの一帯は観光客でめちゃ混んでいて、観光向けのお洒落っぽいレストランには当然の如く入れず、といって他に店がたくさんあるわけではないので、結局この日の昼食は15時前までお預けだった。)


 本州側に戻って、少し離れたところから再び橋をのぞむ。ご覧の通り、水深が浅いのか砂の色なのか水の色なのか、海が絵に描いたようなエメラルドグリーンで(観光案内ではしばしばコバルトブルーと書かれるが)、瀬戸内とも少し違う。目の機能がいきなり向上して彩度がupしてるんじゃないの、ええ、海ってこんなに綺麗になるもの?なんてびっくりしてしまう。