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2016/11/27

温泉ぼこぼこの街で矢鱈ふだん使いなアートに会う

 初の大分県は別府でございます。

 鉄輪(かんなわ、と読む)温泉。地面から噴き出す蒸気が、厚く垂れこめた雲と呼応している。何かが起こっているとしか思えない。なんか地球が生きているのを実感する光景である。
 道路の横の溝なんかも、流れている水が温かいからか、白い蒸気を出していて、歩いていてもほのかに暖かい。


 湯と気体が一緒に噴出する「地獄」は、鉄輪の地域いたるところにある。

 我々は鉄輪の大衆演劇が見られる温泉宿に泊まり、次の日「目 in Beppu」という市庁舎を舞台にしたアートイベントのツアーに参加した。今回は別府経験者と一緒だったので、かなり最初から、優等生な観光ではなかなかたどり着けないような面白さを追求することが出来た。
 加えて、友達の友達の友達の方が、鉄輪のディープスポットに連れて行ってくださり、さらに別府市街地に点在する渋いお店やアートイベントの見どころを紹介してくださった。丁度雨のひどい時間帯に、車で案内して頂けたのは大変にありがたかったし、それ以上に色々と学ぶところ大でした。以下、その時教わったものからいくつか。

 これは、98℃の源泉をちょうどよく冷ますための竹を用いた装置。近寄りすぎると危ない。

 日本最古の木造のアーケードだとか。


 竹瓦温泉は古くからある有名な温泉で、近くはちょっとした風俗街になっている。
 

 建物が恰好いいんだ。
 古いのも新しいのも、モダンなのもレトロなのも、小さ目なのもスーパーなのも、あらゆる温泉が市街地のいたるところに、コンビニなんて目じゃないくらいの間隔であるようで、しかも100円とか200円とかで入れる、常識を超えた世界であった。
 
 ここ「末広温泉」には入ってみた。「別府町じゅう文化祭」ベップ・アート・マンス2016の一環で、大平由香理さんという作家さんが、壁にぐるりと由布岳を描いたのを観ながらお風呂。壁のタイルの淡いピンク色や他の褪せた色合いと上手く響き合う温かみのある色彩で、かなり全体を考えて構成され、描き込まれていて、いい空間だった。中央の湯船といくつかのシャワーだけのごくごくシンプルな温泉で、入り口の箱に200円入れて、鍵で入り口をあけて、入る。常連客と思しいおばさまが温度調整を教えてくださる。
 ここの作家さんはじめ、若い作家が滞在制作しているアパートメント。

 ここは古い建物だから仕方がないのかもしれないけれど、他のところも含め、概して室内が寒い。温泉に入れば冷え切ることはないからいいのだろうか?と勝手に推測する。
 別の滞在作家の展示は、別府駅のすぐそばの市場の一角にあった。


 アートイベント、というとなんか大仰なんだけど、「町じゅう文化祭」のノリだと気軽に参加しやすいのかな?滞在アーティストの他、もっと趣味の制作っぽい人も店開きしていたり、落書きコーナーで何人も一心不乱にチョークで落書きしていたり、あるいはアパート住人の人とすごく仲良く関わって自分もちょこちょこ関連する制作をして楽しんでいる人がいたり、なんかこう普段使いで面白いと思った。

 駅の近くにうっかり岡本太郎の壁画がある。

2016/11/23

片隅だけの世界に。(「この世界の片隅に」で考えたこと 下書き)

…read more以降はネタバレがあるかも。


 「この世界の片隅に」を隣町で観てきた。
 本当に画が綺麗で、つくりが丁寧で、噂に違わず主演の声の同調が半端じゃない。他の人の感想から期待値は相当上がっていたけど、心から素晴らしいと思ったし、随分と泣かされてしまった。そしてまた、ひどく残酷な映画だという感想をもった。
 ここに描かれていた残酷さは、ただ失い続けることじゃない。というより、失い続けながらも、失わずにすんだものや新たに得られたものとともにあるときに、亡霊のように失わずに済んだかもしれない選択肢がついて回ってくることだ。何も選び取ったようには思えない道であっても、実は何かを捨てて何かを選んでいるのであり、意識的にでも無意識的にでもいずれかの道を選ばされているのであり、「ひとつ違えばこうだったかもしれない」が延々と積み重なっていく。失われたものを懸命に繕おうとして、それでも埋め切れない隙間からあちこちに、他でありえた世界へのほころびを垣間見ながら、人々は「よかった選択」の方をみて明るく日常を守ろうとしていて、その哀しさはやりきれない。

枯れ葉を鳴らして山を走る

 一瞬眠りが浅くなった瞬間に、いつもなら意識がはっきりする前に再び眠るところ、一瞬の間の後に災害速報のアラームが鳴って、完全にこちらの世界に戻ってきてしまった。
 近頃地震が多い。場所が場所で津波の警報まで出ているので、心が騒ぎ、一通りニュースをチェックしてもまだ六時だ、目は覚めたが頭が重い。週末ずっと出勤で休養が十分でないのが顔とか身体とかに出ていたところだから(睡眠がいつもより足りないと体重増える)、思い切って午前はゆっくりすることにする。

 何もランデブーもなかったので(これ、たまにぎょっとされるけど、面会の約束や会議の予定、待ち合わせ、はたまた病院の予約など、相手がいて時間が決まってる予定全般に仕える便利なフランス語)、そのまま振替休日を取ることにして家で作業していてもよかったのだが、結局出ることにしたのは、あまりに天気がよかったから。
 実際に、この時期、学校のある久山田の里山はトンネルを出たところから綺麗に黄金色に色づいていて、晴れると高い空との対比が美しいのだ。

 今の仕事場に欠けているものは少なくないし、この街にもないものがたくさんあるのだが、水源池を囲む山の環境は、他の場所では得難いと思う。家と田んぼと、水源池と雑木林を抜ける一車線の道を、登って、ゆっくり下って、最後にまた登る4kmのルート、途中には見事な紅葉の庭や柿の木もある。この道を、ここ二年くらい、結構一人で走ったり歩いたりしている。というか実際のところ、走ったほうが楽なんじゃないかと思うような速さで歩いたり、歩いたほうが速いんじゃないかと思うような速さで走ったりしている。日が沈むと危ないし、真昼間では紫外線が怖いから、大体、出発は日没の一時間前だ。そのくらいに、ひと段落して少し落ち着ける日が週に一日くらいはある。天候が悪くなく、気分転換してもう少し他の作業をしたいと思ったら行くことにしている。季節によって彩りも匂いも変わり、今は黄色の落ち葉がカラカラと音を立てていて、果物のような甘い香りや、堆肥のにおいがする。ほどほどに民家や人の気配があるけど(一応携帯を持っていくし、動物と遭遇しないように、鈴のように鍵をならす)、人目を気にしなければならないほどではない。こんな散歩コースが手にはいるなら、首都圏の人ならどれくらい払うだろう、と思うくらい。
 そんな場所で、私は往生際悪く、頭良くするには運動に若くはなし!とか、最近増やしてしまった背中の肉!とか考えながらうごうごするわけだが、うまいこと走れる時には、「走っているのが当然の生き物になったような感じ」を覚えることもあり、うむ、これは気持ちいいぞ、と得意げににまっとしたりするのである。

2016/11/12

オーブンを働かせる

 これからしばらく土日は空かないような気がしたのでもったいなくて今日はひたすら家でダラダラ(とプロジェクト続きをしてたのだけどさ)、そうだ、かぼちゃの残りをお菓子にしよう、と思って夕方から買い物に出て、百均で紙の型を買って、スーパーでクリームチーズとか卵とか。ついでにタラの切り身が安くておいしそうだから鍋にしようっと。
 レシピは以下を参考に。
かぼちゃのクリームチーズケーキ
 いくつかレシピを見た結果としては、ベーキングパウダーも使わず卵を泡立てもしない、かなり原始的な焼き物(いわばたまご焼きの応用)っぽいので、g単位でレシピに厳密を期すことも必要なかろう。
 南瓜がたくさんあったので、結局以下のぐらいの分量で。
かぼちゃ300gほど
クリームチーズ150g
グラニュー糖70g
卵M 2個
無調整豆乳200ml(これはレシピによっては牛乳のこともあり、生クリームのこともある。結構一人で食べちゃうだろうからヘルシー志向にしといた)
薄力粉30g

0, オーブンは170℃に余熱。
1, 南瓜はレンジにかけて皮を取り、適当に切って大きめのボウルに入れてフォークで潰す。卵を一個ずつ加えてとろっとさせる(混ぜるが泡立てないこと)。
2, クリームチーズは少しレンジにかけて、とろっとしたところを泡だて器でなめらかにし、そこに砂糖を加えてさらに滑らかに。
3, 室温に戻してあった豆乳を適当に1および2のボウルに加える。
この華麗なる適当さによって、二つのボウルの中身の「とろみ」をなんとなく同じような感じにすると、4で混ぜやすい。
4, 1,か2のうち大きなボウル(私のところでは1)に、小さなボウルの中身を半分ずつ入れて、ざっくり混ぜる。(まだ小麦粉が入っていないから、ボウルについてるクリームチーズ×砂糖は味見OK)
5, そこに小麦粉を加えてさっくり混ぜる(泡立てない)。
6, 型に入れて170℃で、まずは45分、様子を見てプラス10分ほど焼いた。

5で、横着をして小麦粉を篩いにかけなかったので、ちょっと白い斑点が出来てしまったけれど、まあ、材料から想定する以上のおいしさにはなったのでいいことにしましょうか。

ちなみに、タラはコチュジャン使って少しチゲ鍋風にして食べた。美味しい。

2016/11/07

偽物疑惑が生じるくらいに

 今日は朝っぱらから一日本格的に動いた。私の親戚友人が見たら、あれは奴ではない、といいそうなくらい、尾道にとどまっている休日にしては活動的だった。
 朝から、なかた美術館のお散歩ワークショップで、旧高橋玄洋邸および長江界隈の山手を探検。高橋玄洋氏は60-70-80年代にすごい視聴率を叩き出した脚本家の方だが、終戦後からしばらく尾道に住んでいたりこの街にゆかりが深い。彼についてリサーチして美術館で展示もしている作家の横谷奈歩さんのガイドで、旧宅に残っているアルバムやら蔵書やら原稿やら日記やらを探る。お父様ののこした日記とか、大学時代のノートとか、めっぽう面白い。繋がりがリアルに感じられる歴史を、モノを頼りに見るのがわくわくする体験だった。参加者のご婦人など、アルバムにお知り合いが登場したりするのも盛り上がった。山手は一つ筋を間違うと同じ場所にはたどり着けないので、何度も歩いた道のすぐそばに初めての場所があったりする。

 その後、インドカレーでランチをして(長江通、いつも行列のラーメン屋のちょうど向かいにある喫茶店風の店構えの「ますや」、出てくるカレーは結構ハードにインドで気に入ってる)、駅前からそのままバスで大学祭へ。物販を冷やかし、お茶席に入れてもらい、お笑いを見ようと思ったけれど芸人さんの到着が遅れて混みそうなので、ひとまず下山。
 というのはもう一つのミッションがあったからで、車を取りに家までもどってから、オーブンレンジを買いにヤマダ電機へ。前日に一通りの説明を受けた結果一番気になっていた、予算内なのに、はるかに越える機能と庫内体積を誇るモノを購入した。これで異音のする13年物のオーブンレンジとさらばできる。一応補足すると、元はジョンストンズのカシミアストールを余裕で上回る値段だったのが、ストールよりも断然安くなっていたのである。この冬は、確かなぬくもりはオーブン料理から確保することにしよう。ただ、先代の置いてあったスペースでは足りないので、考えた末に、ニトリで天板と足を選んで簡単に組み立てられるデスクを買って帰った。台所に机というのも変な話だが、なによりオーブンの底面積に合致した大きさが選べて、手間もほとんどかからず、値段もリーズナブル、下手にレンジ台とか買うより、ただの台だったらカウンターみたいに使えるし、別の仕方でも使えるし、と決めたもの。

 帰宅してからは、3時間近くかけて台所のリフォームとオーブンレンジのインストールを済ませた。今までの無印良品のラックを一つ解体し、一つは段を変えて、場所が出来たら机を組み立てて、レンジを載せる。丁度、娘とクッキーをこねたりできそうな(娘はいないけど)作業台もできて、よい感じである。

 さすがに重労働で疲れ切って(まずオーブンレンジを車から降ろして家に入れ、箱から取り出して台に乗せるのが重かった!)、加熱用牡蠣を白ネギ、エノキ、豆腐、生姜と一緒に味噌鍋にしてあったまりました。レンジの活躍は明日から~!