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2016/04/25

リモンチェッロ

 レシピを書き留めるためのノートをわざわざ買ったあとで気付いたのだが、これ、ネットに挙げておけばいつでも検索して見られるし、参考にしたレシピもリンクを付けられるし、写真も一緒に整理できるし、いいことずくめなんじゃないかしらん?早速やってみることにする。


 まずは、材料。これは、向島の露店でそれぞれ一袋100円で手に入れた瀬戸内の柑橘類で、出来た姉である私は、比較的綺麗な中央と左下のレモンは妹に送ってしまったので、右上のやや小さ目のレモンを使う。

 メインの材料を入手したらリサーチである。
 リモンチェッロなるものが作成可能だということくらいしか知らないので、いくつかレシピを見たりして味の予想を付ける。「リモンチェッロ レシピ」とかで検索して、クックパッドの有象無象を注意深く避け(*)、意外と使えるまとめサイトなどみていると…
自家製リモンチェッロのつくり方レシピいろいろ|Naverまとめ
 こんなのを見つけて読み込み、結果的に
イタリアマンマの直伝レシピ~リモンチェッロ~|ほぼ日刊イトイ新聞
 これにたどり着く。大体、「ほぼ日」の実験系料理はあまり間違いがない。おそらく、これが一番本格的で美味しくなるレシピ。
 スピリタスウォッカ1リットルに、レモン6-8個分の皮を一週間漬け込み、取り出してさらに別のレモン6-8個分の皮を同じものに一週間漬け込む。その後、水1リットルを温めて漬け込んで白くなった皮からさらにエキスを取り出しつつ砂糖750gを溶かす。冷めてからそれぞれを濾して合わせる。

 うん。きっとすごくおいしいだろう。
 問題は、とても面倒そうなこと!!イタリアの家庭で作られている飲み物がそんな厳密なものであっていいはずがない。少なくとも私には無理!と思って、さらに複数のレシピの読解に励む。
Casa dell'Albero|自家製リモンチェッロ
自家製の美味しい リモンチェッロはいかが?!| イタリア・絵に描ける珠玉の町・村 ・ そしてもろもろ!

 割り出されたのが以下。

・レモン7個分の皮を、96度スピリタス500mlに一週間くらいつけこむ。
・そこに、500mlのミネラルウォーターに350gのグラニュー糖を熱して溶かしたものを冷まして合わせる。


 これが材料だ!右上が、泣く子も黙る96度のアルコール、スピリタスウォッカ。歩いて5分のスーパーであっさり見つかった。500mlで2000円なり。これに、漬け込むためのWeckの可愛い水差しを加えて、レモン100円で始めたのに、材料費が2500円に…不覚。


 何より重要なのは、レモンの黄色いところだけを丁寧に剥くことの模様。白いところが入ると苦味が出てしまうのだそうだ。ずっと昔100均で買ったピーラーは全然使い物にならないので、研いでもらったばかりの包丁で。
 そして、前述のWeckの水差しを軽く熱湯で洗ったものに入れて、上からスピリタスをとぽとぽ。

 保存食系で一番気を遣うのは衛生管理だが、その点96度のアルコールに漬け込むなんて無敵でしょう。そのものが消毒薬みたいなものだもの。イタリアの家庭料理、さすがだ。


 皮をはがれたレモンはスライスしてパッドに並べ、冷凍しておきます。これはこれで紅茶とか料理に。

 レモンピールのアルコール漬けは、冷蔵庫に保管して毎日ゆすっていると、なるほど一週間くらいで白く色が抜け、代わりにアルコールに綺麗なレモン色がうつった。

 そこで、コーヒーフィルターとざるを使って濾す。その間、ホウロウの鍋でミネラルウォーターを熱し、砂糖350gをなんとかして溶かす。砂糖の350gというのはなかなかぎょっとする量であって、分量は増えてトロリとしてくる。(アルコールそのものに加えてこの砂糖の割合なのだから、本当に、ちょっとやそっとじゃ腐るはずがない。凄い保存食である。)

 冷めたら、レモンエキス入りアルコールとこのシロップを混ぜ、瓶に詰めて、冷蔵庫でさらに一週間以上置く。


 思ったより量が増えたので、瓶が足りなくなって、Weckの可愛い水差しだけでなく、スピリタスの空き瓶はもとより、炭酸水の入っていたペットボトルも使用。ペットボトルの分は早めに飲んでしまわないと…!
 

 冷凍庫で冷やして、小さなリキュールグラスでキュっと頂きましょう。すでにアルコール分ともよく馴染みつつあり、すごーっく香りがよくて、甘くて、口の中から頭に抜けるように爽やか。なのに足腰立たなくなるくらい強い。悪魔の飲み物ですね。すてきすてき。

(*)こういう実験的なモノの時にはクックパッドは使いません。課金したら話は別だろうが、通りすがりの人間なので、よく作るものを材料とかやりかたでずるをしたいときとか、今夜のおかずが思いつかないときとかに、材料で検索してみて適当にアレンジする、という使い方をしている。

2016/04/24

ハッピーアワー


特に決まった予定がない土曜、駅前にある街でたった一つのシネマの、街でたった一つのスクリーンに、続けて濱口竜介監督『ハッピーアワー』(2015年、日本)がかかるという。
映画「ハッピーアワー」公式サイト

 即興演技ワークショップみたいのんに集まったほとんど素人の主演女優さん四人がロカルノ映画祭というところで賞を取ったので話題になった、317分の大作。不明にして監督のことは知らず、邦画、五時間強、「ほとんど素人」などなど、あらゆるネガティヴな情報にもかかわらず(私は凹凸の豊かな顔とプロの仕事を二時間チョイきっかり楽しみたい主義だ、普段は)、さる尊敬する物語の目利きの方が絶賛してらしたのを思い出したりしたこともあって、ふらふらっと行ってみたのだった。

 5時間17分という常識外れの尺を、「短かった」とか「あっという間だった」とかいう人はちょっと足腰強すぎか前の日に焼肉とかで気合入れてたんだろうと思う。
 5時間17分、かなり肩凝ったし、腰痛くならないように結構もそもそ動いたし、二回の休憩はがっつりトイレ行ったし、一度は頭がエネルギー切れ起こしてお祭りの屋台までコロッケを買いに走った。心身ともにかなり消耗した。それでもなお、もっと観ていたいと思ったし、素人目にみても、この長さは無駄じゃあなかった思う。完成度は非常に高くて(部分的に少しご都合主義的だと思ったところはあったけれど)、私の知っている「映画」というのとは大分違っているけれど、あの空間だからこそ体験できたものだったように思う。その後で、偶然にもその日劇場に来ていた才女たちとカレーとビールであーだこーだとしゃべくれたのもよかった。ココロの方にはかなりガツンと来るやつだったから、一人で帰ったら随分と悶々としていただろうと思う。

 音楽が美しくて、背景の神戸の街も、それぞれの舞台となるおうちとか建物も意味をもって生きているので細部に注目するほど楽しくて、四人の主役の女性たちは成程素晴らしくて、というかどんどん魅力的になっていった。
 それ以上に、人との距離の取り方や、もう少し大きい括りで言うならコミュニケーションのモードが、人それぞれにささやかだったり決定的であったり違う、その違い方が時が経つにつれて明るみになる仕方が鮮やかだった。そうして抉り出される、尊重し合う事と分かりあう事のバランスのギリギリさ、ひいては人と関わることの難しさがリアルだった。

 「隠し事は嫌い(腹の底隠さないで話そう)」「ここでは触れ合う事でわかりあおう」・・・そう口に出すことは、一見フェアなのだが、それによって、その場で「ただしいこと」と「間違っている」ことが形作られるような権力的な動作でもある。言われた側は、違和感がもしあっても、その言葉で成立してしまった善悪のモードの中で、その違和感を抱え続けることになる。こういう一種の暴力の構造(これは、しゃべりたくない側が先に声を出した場合「自分はこういうコミュニケーションしかできない(だから察してほしい、わかれ)」になる)は、私が長い間すごく身近に考えてきたことだったりする。全てモードと正否が定められた裁判という場所との対比もあって、その不当さや、でもそれが崩れた時の(違和感を抱えながら黙っている人もまた声をあげはじめたときとか)どうにもならなさが身に染みた。
 感覚や印象を言葉にするという点でも、それが巧みな人、全然な人、むしろきれいな言葉で蓋しちゃう人、などなど色々なスタンスの取り方が登場していて、それぞれに、何らかの(たいていは不当に思えるようなきっかけで)そのモードの変換を迫られていくようなところも面白かった。(でも結局のところほとんど変わることが出来ないので、出来ることといったら「似合わないことをする」くらい、というのも説得力ある。)
 
 ちなみに、予告編では四人の親友たちの関係性やそれぞれの生活が、その一人である「純」の衝撃的な告白から大きく変貌していく…というプロットが採用されているが、ひとりの「ジョーカー」がその日常に闖入してきたことによって…みたいな予告編(というか、あらすじ?)も作れそう。。。とか思ってしまった。
 まあ、こんな事を言ってはなんだけど、どうにもこうにも分かっていない、ずれてる男性キャラクターたちがいちいち「あるある」すぎるので、女子諸君は、そこそこ可愛いけど絶望的に鈍いとこのないでもない恋人とかよりは、才気あふれる友人とかと観るのが盛り上がるのではないか。


これは自家製リモンチェッロ。

2016/04/14

リチャード・ギア三人分のクレソンを食べよう

「クレソンは薬味ではなく野菜。子供の野っ原遊びじゃないんだ、リチャード・ギアの抱える花束くらいの量で売ってくれ。」・・・小野桃子さんtwitterより

 蓋し名言である。

 今年も待望のクレソンの季節がやってきた。今シーズン初めて、裏山の小川で採集してきたリチャード・ギアにして三人分くらいのクレソン、遅くなって疲れてしまってサラダという気分でもなかったので、豚肉と常夜鍋ヴァリエーションにしよう。レシピは以下を参考に。
クレソンと豚肉のこしょう鍋
 ニンニクが入って、カツオだしでスープにかなりしっかりと味がつくので、ポン酢はなし。最後にレモンをぎゅっと絞ってしまうのは私流である。黒胡椒とレモンは悪魔のタッグですね、どんな出汁にも合うんじゃなかろうか。
 締めはにゅうめん、といっても平日の夜にそんなにゆっくり飲むなんてわけにもいかないから(原稿締切もあるし…なら何故コレを書いているのか不思議なものだが、うむ、そういうものですよね)、「おかわり」ぐらいのタイミングから炭水化物が入る。
 
 鍋ならこれも美味しそう!↓鴨なんてないから鶏かな?
【レシピ】肉の旨みと辛みがよく合う~鴨とクレソンの鍋 
 
 今の時期のクレソンは本当に柔らかくて、採ってすぐなら苦味もほとんどない。もうちょっとアクの出たのなら肉に添えたり、油っこいパスタに絡めたりも。半熟卵とかカリカリベーコン、ジャガイモとニンニクをこんがり焼いたのとか乗せたデラックスサラダも素敵。暖かくて天気のいい日に明るいうちにフリーになったら、軽いワインと食べたい!