ここには書いていない気がするけれど、「空き家」に引っ越してもうすぐ半年になる。「空き家」に住むというのは、おそらく尾道独自の表現で、空き家だった期間がそれなりにある古い住宅、ただ「古民家」と恰好よく呼ぶほど古くない建物に、借家住まいすること。山と海と寺と線路に市街地が密集した山手で戦後ぐらいに建てられて以前は人が住んでいたけれど不便だったりして空き家になっていた住宅を直したり直してもらったりして住んでいる人が、尾道には結構いる。
引っ越しを考えたのは、子どもが本格的に動くようになるとともに、夫の会社がテレワークの制度をきちんと実装して、1.5人住まいなら何とかなっていたアパートが手狭になったことであった。同じ条件で広くすると家賃が倍なので、うーん、と発想を転換、尾道らしいことをしてみようということになった。光熱費も物価も値上がり甚だしい今、この判断は間違っていなかったとしみじみ思う。本格的に動くようになった子どもは、ある程度危険を察知したり、言い聞かせを守ったりもできるので、古い家につきものの危険も本当の乳児ほど心配しなくていい。「まっくろくろすけのおうち」といって急な階段や破れたふすまを楽しんでいる。
冬の間、一番の敵は寒さだった。居間と子供部屋と台所がつながった一階ではエアコンと灯油ファンヒーターを併用し、寝室にはパネルヒーターを置いて、座り仕事の時には電気毛布も使いながらなんとかしのいだ。
あたたかくなってくると、今度は生きものである。四月末ごろから、風呂場にナメクジ、ダンゴムシ、夜になると居間に蚊、留守中には台所にネズミ。ゴールデンウィークの後半で、これはという穴をふさぎ、ネズミ捕りを念のため置いて、さらにお風呂の排水溝から上がってくるのに少し苦労するように細工をし、蚊取りのノーマットを買い込み、ゴキブリキャップを設置し、玄関の引き戸周辺には虫の忌避剤を撒いた。暑くなる前に、風を通すのに必要な網戸の修繕もした。まあ、だいたいは夫がやってくれたのだが。ナメクジはそれでも上がってくるのだが、見つけたその都度熱湯で流し、さらに排水溝にも熱湯を少しかけて「ここはいい棲み処じゃないよ」と根気よくメッセージを送っている。
梅雨時には(つまりこれからだ)ムカデが現れるという。ムカデは夜行性だし噛むから怖い。先日、息子のダンゴムシ移住大作戦に付き合っていたら、ムカデの赤ちゃんを見つけたが、長さ1センチ足らず、幅は小さなタイプの蟻よりさらに小さい。こんなの入ろうとおもえばアッというまに家に入ってしまうだろう。近隣の方々からいただいたアドバイスをここに記しておく。戦いが始まったらまた報告しようと思います。
・とても小さい子や動物がいないなら忌避剤を撒くのが一番効果的
・捕らえたときに噛まれないように、長さがある火箸(炭をつかむ大型のトング)を用意するといい。
・バケツに少量の水を張って寝室などにおいておいて、遭遇すると放り込むようにすれば、抜け出せずにおぼれ死ぬ。
・熱湯をかけると確実に殺せるのでポットに熱湯を用意。
・凍らせるタイプのスプレーは直撃できれば反撃の危険がないし、殺虫剤の薬をまき散らさないので住人にも安全。
・ムカデが好む毒餌を寝室など重要なところにおいておく。食べてからは動きが鈍るので遭遇しても処理しやすい。
・寝る前に必ず布団の中に忍び込んでいないかを確認すること。
・見つけたら、処理方法に迷うまえにガムテープやコロコロなどで動きを封じること。出なければ畳の隙間や壁の隙間に逃げてしまう。
・ごちゃごちゃや湿気がたまる場所、ゴキブリ、などというムカデが好む環境をつくらない。
さらに、ムカデやゴキブリの天敵として、アシタカグモがいる。結構ごつい見た目で脚を入れると5センチを優に超えるので、油断しているときに見つけるとかなりぎょっとするのですが、我が家では「クモのロッキー」として有難く居候していただいています。
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