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2016/11/23

枯れ葉を鳴らして山を走る

 一瞬眠りが浅くなった瞬間に、いつもなら意識がはっきりする前に再び眠るところ、一瞬の間の後に災害速報のアラームが鳴って、完全にこちらの世界に戻ってきてしまった。
 近頃地震が多い。場所が場所で津波の警報まで出ているので、心が騒ぎ、一通りニュースをチェックしてもまだ六時だ、目は覚めたが頭が重い。週末ずっと出勤で休養が十分でないのが顔とか身体とかに出ていたところだから(睡眠がいつもより足りないと体重増える)、思い切って午前はゆっくりすることにする。

 何もランデブーもなかったので(これ、たまにぎょっとされるけど、面会の約束や会議の予定、待ち合わせ、はたまた病院の予約など、相手がいて時間が決まってる予定全般に仕える便利なフランス語)、そのまま振替休日を取ることにして家で作業していてもよかったのだが、結局出ることにしたのは、あまりに天気がよかったから。
 実際に、この時期、学校のある久山田の里山はトンネルを出たところから綺麗に黄金色に色づいていて、晴れると高い空との対比が美しいのだ。

 今の仕事場に欠けているものは少なくないし、この街にもないものがたくさんあるのだが、水源池を囲む山の環境は、他の場所では得難いと思う。家と田んぼと、水源池と雑木林を抜ける一車線の道を、登って、ゆっくり下って、最後にまた登る4kmのルート、途中には見事な紅葉の庭や柿の木もある。この道を、ここ二年くらい、結構一人で走ったり歩いたりしている。というか実際のところ、走ったほうが楽なんじゃないかと思うような速さで歩いたり、歩いたほうが速いんじゃないかと思うような速さで走ったりしている。日が沈むと危ないし、真昼間では紫外線が怖いから、大体、出発は日没の一時間前だ。そのくらいに、ひと段落して少し落ち着ける日が週に一日くらいはある。天候が悪くなく、気分転換してもう少し他の作業をしたいと思ったら行くことにしている。季節によって彩りも匂いも変わり、今は黄色の落ち葉がカラカラと音を立てていて、果物のような甘い香りや、堆肥のにおいがする。ほどほどに民家や人の気配があるけど(一応携帯を持っていくし、動物と遭遇しないように、鈴のように鍵をならす)、人目を気にしなければならないほどではない。こんな散歩コースが手にはいるなら、首都圏の人ならどれくらい払うだろう、と思うくらい。
 そんな場所で、私は往生際悪く、頭良くするには運動に若くはなし!とか、最近増やしてしまった背中の肉!とか考えながらうごうごするわけだが、うまいこと走れる時には、「走っているのが当然の生き物になったような感じ」を覚えることもあり、うむ、これは気持ちいいぞ、と得意げににまっとしたりするのである。

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